令和4年3月1日から、5~11歳の新型コロナウィルスワクチン接種の予約を開始します。
接種は3月8日以降に開始予定です。接種券が届きましたらご予約下さい。
当院に受診歴のあるお子様に限定で、予約制とさせて頂きます。 (ワクチンが1本10人分で半日の有効期限の為、希望日を調整させて頂くことがありますので、ご了承下さい。)
私の現時点での見解は、基礎疾患のない子どもには「今ではない」と考えていますが、接種をお勧めしたいお子さんもいるのが事実です。
現時点で使用できる、ファイザー社製の小児用mRNAワクチンの治験データを示します。
抗体価:成人の1/3量の接種で成人と同等の効果
有効性:90.7%(デルタ株対象のため:成人と同等)
副反応:16歳以上の成人の接種よりかなり低い
発熱 6.5% (16-20歳 17.2%)
疼痛 11% (16-20歳 40%)
心筋炎 0/4600例
(*その後、米国CDCの追跡調査で、11例/870万接種:全例軽症)
このように有効性・副反応とも問題ないと思われるデータで、日本でも認可されました。
では積極的に接種をお勧めするかと言われれば、消極的にならざるを得ません。現時点で日本でコロナで亡くなった未成年はデルタ株で4例だけで、いずれも重い基礎疾患を持った方でしたが、10歳以下は0例です。オミクロン株となってからは子どもの感染もさらに増えましたが、発端はほとんど周囲の大人からで、さらに子ども間の感染も起こるようになりました。しかし健康な子どもの重症化はほとんどなく、国際的にもこの年齢層での死亡は無いようです。
現在のオミクロン株に対しては、ワクチンの感染予防効果は不十分で、重症化予防効果しか期待できません。あるとすれば周囲の人にうつさないため位だと思われます。
また成人の感染では、症状の重さに関係なく、罹患後40%程度の人に心身症的後遺症(Long COVID)が発生していますので、この予防目的でも思春期以降の人は接種すべきと思われますが、今の所は小学生以下でオミクロン株での発生報告はなく、この危惧も不要と思います。
重症化がないのに、健康な子どもに少ないながらも健康被害を起こしうる接種をすべきでしょうか?
但し、重症化しうる基礎疾患がある子どもは別です。国内外の小児科関連学会からは、以下の基礎疾患を持つ子どもには接種が推奨されています。
① 高度肥満児
② 小児がん・血液疾患・移植後など免疫抑制療法をうけている子
③ 治療観察中の重症先天性心疾患
④ 神経疾患:脳性まひ・重症心身障がい児・難治性てんかん・ダウン症など
⑤ 医療的ケア児 など
また現在シオノギ製薬などで、副反応の少ない従来型の不活化ワクチン(B型肝炎ワクチンに似ています)も臨床試験段階にあります。これはmRNAワクチンより効果は劣りますが、変異株にも対応しているとの事で期待され、近い将来に実用化されそうですので、いずれ打つ必要がでてきたら、それを待つ手もアリかと思います。
【2022.4.20追記】
昨日、NOVAVAX(武田)の新型コロナウィルスワクチンが承認されましたが、当面18歳以上が対象で、小児には使用できません。B型肝炎ワクチンと似たワクチンで、副反応が少なく、現時点で80%程度の感染予防効果がありますので、有用なワクチンですが、残念ながら小児は今しばらく待つ必要があるようです。
基礎疾患のない児については、
1.同居家族に高齢者や重い病気の人・妊婦・新生児がいる
2.本人や家族に大切な行事があり、極力感染を避けたい児
3.感染して隔離療養となると、家族の生活に甚大な被害が起こり得る
このような場合は接種を考えても良いでしょう。
要は、現時点では、保護者の3回の接種を進めるのが最優先と思います。
同居家族にハイリスクの人がいるなど、それぞれの家庭の事情もあるでしょうから、希望される対象年齢の子どもは無料で接種は受けられます。心配な点がありましたらご相談下さい。